日本屈指の外科医を隠して無能を演じる俺→美人女医がヤクザに最難易度の手術を強要されピンチに俺「私がやります!」女医「え?」
漫画系YouTube(スカッと×恋愛)向けのサンプル台本です。※本サンプルは冒頭部分です。
登場人物
主人公
神崎 蓮(かんざき れん)
- 34歳
- かつて「神の手」と呼ばれた天才外科医。
- 5年前、ある事件をきっかけに表舞台から姿を消し、地方病院で「無能医」として働く。
- 手術の腕は超一流だが、普段はダラけて適当な態度をとり、周囲には「使えない医者」と思われている。
ヒロイン
橘 美咲(たちばな みさき)
- 28歳
- 東京大学医学部卒のエリート外科医。
- 努力家で、負けず嫌いな性格。
- 神崎蓮のことを「使えない医者」と見下しているが、実際は少し気になっている。
- 父親も医者だったが、ある事件で命を落としている。
ヒロインの父
橘 幸英(たちばな ゆきひで)
- 55歳
- 神崎蓮を「神の手」と呼ばれるほどの天才医師に育てた恩師
- 知る人ぞ知る凄腕外科医
- 橘美咲の父親
- 不当な理由でヤクザに狙われ、命を落とす
ヤクザの組長・患者
藤堂 仁(とうどう じん)
- 日本最大の暴力団の組長。
- 敵対組織に命を狙われたが、橘教授のオペにより一命を取り留めた
この後の展開
ヤクザが病院に乗り込み、組長・藤堂の最難関手術を美咲に強要する。追い詰められた美咲の前で、無能と呼ばれていた神崎が「私がやります」と名乗り出る。5年ぶりに「神の手」が動き、美咲の父の死の真相も明かされていく――。
※本サンプルは冒頭部分です。
ストーリー
もう全部どうでもいいや。
ただ目の前の患者を助けようとしただけの橘教授が撃たれた。
俺は橘教授を救えなかった。
俺の名前は神崎蓮。
「神の手」と呼ばれる天才外科医だ。
俺を苦しめているのは、5年前に都内の大学病院で行われた大掛かりなオペのトラウマだ。
青白い手術灯が眩しく光り、無機質な機械音が室内に響いていた。
「ピッ……ピッ……」
規則的だったモニター音が、次第に不規則になっていく。
張り詰めた重い空気の中、看護師の声が響く。
「血圧、急激に低下! 収縮期60を切りました!」
「先生、このままでは」助手の医師が小声で蓮に伝える。
手術台の上に横たわる男性の口には挿管チューブが固定され、腹部を覆う術布は鮮血に染まっていた。
この男性は外科医の橘教授だ。
日本を代表する名医であり、俺の恩師だ。
「くそっ、輸血はまだか!」
俺は焦りながらも、手を止めることなく処置を続けた。
橘教授の体内には銃弾が埋まっており、肝臓と腎臓を貫通している。
出血量は致命的で、どれだけ止血しても追いつかない。
輸血なしでは、あと数分ともたないことは明らかだった。
しかし……
「先生!! RhマイナスAB型のストック、すべて使い果たしました!」
看護師の絶望的な声が、手術室の空気を一変させた。
「なんだと?」
通常、病院には緊急時のために一定量の輸血用血液が確保されている。
しかし、橘教授の血液型は日本人の2,000人に1人しかいない珍しい血液型。
AB型Rhマイナスなのだ。
日本人のわずか0.05%しかいない希少なこの血液型は、ストックそのものが少ない。
最初に準備したわずかな在庫は、すでに橘教授の体内へと流れ込んでいた。
「O型Rhマイナスは!?」
「先ほどの多重事故の搬送で、すべて使い切っています!」
「血液センターからの搬送は!?」
「到着まで30分以上かかるとのことです!」
30分……
この状態で、あと30分も耐えられるはずがない。
「くそっ!!」
なんとか持ちこたえさせなければ……だが、どうすれば……
俺は焦る気持ちを抑えながら、メスを置き、止血鉗子を握りしめた。
落ち着け、俺。
なにかいい手はないのか。
なんとか出血を止めなければ。
橘教授の腹部には、肝臓と腎臓を貫通した銃創。
傷口から噴き出す鮮血は、術野を赤く染め続けている。
「ガーゼ! 追加!」
看護師が素早くガーゼを手渡す。
俺は傷口を押さえながら、鉗子で血管を挟み、縫合を試みた。
しかし……
ジュワッ……
ガーゼが一瞬で赤黒く染まっていく。
「……クソッ!」
止血が追いつかない。
血管の損傷が予想以上に酷い。
肝臓は豊富な血流を持つ臓器のため、一度損傷すると出血が止まりにくい。
通常なら輸血と並行しながら慎重に血管を縫合するが、輸血が尽きている今はそれができない。
くそ……これじゃまるで、沈む船の穴を手で塞ごうとしてるみたいだ!
「先生!」
助手の医師が叫ぶ。
「心拍、130を超えています!」
橘教授の体は徐々に冷たくなり、血色が失われていく。
まるで、生命がゆっくりと削り取られていくかのように。
「先生、酸素飽和度が急激に低下しています!」
「なに!?」
モニターを見ると、SpO₂(動脈血酸素飽和度)が80%、70%と下降していく。
(出血性ショックだ……もう末梢まで血が回っていない!)
手が震える。
「人工心肺の準備を!」
そう言いかけた瞬間、モニターの波形が激しく乱れ、アラームが鳴り響いた。
「先生……心室細動です!!」
手術室が一瞬、凍りつく。
心臓が早鐘のように鳴る。
俺はすぐさま除細動器を掴み、電極を橘教授の胸に押し当てた。
「チャージ200!」
ビリッ!
強い電流が流れ、橘教授の体が跳ねる。
「頼む!」
モニターに目を凝らすが、波形は戻らない。
「もう一度だ!」
ビリッ!!
しかし、何度試しても、橘教授の心臓が再び動くことはなかった。
やがて乱れていた波形は、一本の平らな線に変わった。
「ピーーーーーーー」
手術室に重い沈黙が流れる。
俺はゆっくりと手袋を外し、拳を握りしめた。
「橘教授、申し訳ございません……」
処置室のベッドに横たわる橘教授。
その横で、椅子に座ったまま震えている少女。
少女の名は、橘 美咲。
橘教授の娘で、当時は医大生だった。
彼女は父の最期を前にして、初めて医療の限界を知ることになる。
「お父さん……」
美咲の声は、涙でかすれていた。
震える指先が、父の冷たい手を握る。
いつもなら、どんなに忙しくても「疲れた」とは言わなかった父の手。
それが今は体温を失い、少し硬くなった皮膚は、美咲の体温を少しも受け止めてくれない。
「ねぇ、お父さん、目を覚ましてよ……」
喉を詰まらせながら、美咲は言葉を紡ぐ。
「どうして……どうして目を開けてくれないの……?
いつもみたいに、難しい手術の話をしてよ。
また『医者は技術じゃない、人の命を救いたいと思う心が大事なんだ』って言ってよ!」
かすれた声で懸命に訴えても、その声が届くことはない。
目の前の父は、もう帰ってこない。
それでも、美咲は現実を受け入れたくなかった。
「ねぇ、先生……」
美咲は涙を流しながら、俺の方を見た。
「お父さんが撃たれた理由……何かご存じですか?」
「……っ!」
もしかして、勘づいてるのか?
俺は思わず息を飲む。
橘教授は、ただの民間人だ。
医師としては超一流だが、銃で撃たれるような人間ではなかった。
なのに、なぜ撃たれたのか。
この裏に普通じゃない何かがあることを、美咲は感じ取っていた。
「……いや、何も知らない」
その場しのぎの嘘をついた。
「君の親父さんは……ただ運が悪かったんだよ」
美咲は俺の言葉を聞くと、少しの間、俺の目をじっと見つめていた。
まるで、俺の中にある嘘を見抜こうとしているかのように。
しかし。
「そうですか」
彼女はそれ以上何も言わず、視線を父に戻した。
そんな彼女を、俺はただ黙って見つめることしかできなかった。
拳を握りしめる。
何か言わなきゃいけない……
なのに、かけられる言葉が見つからない。
俺は、この件をただの「医療の限界」として片付けることができなかった。
なぜなら、この背景にある組織が関わっていることを知っているからだ。
その組織とは、日本最大の暴力団だ。
橘教授は、暴力団の組長である藤堂 仁の命を救った。
しかし、その行動が裏目に出た。
藤堂の敵対組織は「藤堂と関わる者は皆、粛清する」として橘教授を狙った。
橘教授は、ただ医者として目の前の命を助けようとしただけなのに。
その結果、報復として撃たれた。
だが、それを彼女に伝えることなんてできない。
俺が知っている事実を話せば、彼女も暴力団に狙われるかもしれない。
いや、橘教授が関係者と見なされた時点で、その娘である彼女もすでに標的になっている可能性すらある。
そんなこと、言えるはずがない。
娘さんは、何も知らないままでいい。
ふと、彼女の顔を見た。
その瞳には絶望と悲しみ、そしてかすかな疑念が宿っていた。
これでいいんだ。
俺は自分に言い聞かせる。
娘さんがこれ以上深く追及しないように、俺が壁になればいい。
それが、俺にできる唯一の償いだった。
だが、この決断が間違いだったことに気づくのは、5年後のことだった。
5年後、俺は地方の小さな病院で働いていた。
いや、働いているというより、ただ存在しているだけのようなものだ。
かつて「神の手」と呼ばれた俺は、今は無能医者として知られている。
「あー、今日もだるいなぁ」
適当にカルテをめくりながら、俺はソファに寝転がる。
医局では、数人の医師が忙しそうに働いている。
誰もが真剣な表情でパソコンに向かい、患者のカルテを確認し、看護師とのやり取りに追われていた。
だが、それは俺には関係のない世界だった。
どうせ「神崎は無能だから」と言われ、まともな仕事は回ってこない。
それが俺にとっては都合が良かった。
俺はもう、誰も救うつもりはなかったから。
そんな俺が働くこの病院に、新しく一人の医師が配属された。
「はぁ……」
ため息をつきながら椅子に腰を下ろす、見かけない女性医師。
「どうして私がこんな田舎の病院に……」
東京の最前線でバリバリと手術をこなしていた彼女にとって、この異動は左遷以外の何ものでもない。
彼女は大学病院の派閥争いに巻き込まれ、地方病院への異動を余儀なくされたのだ。
それがなんと、橘教授の娘、橘美咲だった。
美咲は自分の実力に自信があったし、どんな状況でも結果を出してきた。
それでも、医療の世界では「実力」だけでは生き残れない。
政治と権力。
それが彼女を、ここに追いやったのだった。
「でも、ここで腐ってる場合じゃないわ。
どんな環境でも、私はやるべきことをやる。
私はそう決意しているの」
「それにしても、あの神崎先生って人……本当に無能なの?」
彼女は腕を組みながら、医局の隅でソファに寝転がっている俺を見つめた。
「神崎 蓮、34歳。
この病院の外科医でありながら、ほとんど手術をしない男。
書類仕事は雑、患者の対応も適当。
なによりも、医者としてのプライドが感じられない。
医者なのに、手術をしたがらないなんてありえない!
でも、どこか腑に落ちないのよね……」