サンプル脚本『先輩の「やり直し」には理由がない』第1話
女性向け恋愛ショートドラマ向けのサンプル脚本です。
簡易香盤
【シーン1】オフィス(夜)
登場人物:ひより、桐谷
小道具:企画書(1回目〜4回目)、付箋、スマホ2台、ノートPC
【シーン2】エレベーターホール(朝)
登場人物:ひより、桐谷、部長
小道具:企画書(1回目)、コーヒー、スマホ
登場人物
- ひより(24): 入社2年目。顔に出やすく、嘘が下手
- 桐谷(28): 同じチームの先輩。必要なこと以外は話さない。理由を説明しない
- 部長(50代): 穏やかな上司
表記:(M)=心の声/【映像】=カメラの指定
○ シーン1 オフィス(夜)
【映像】ひよりのデスクに、企画書が置かれる。表紙に付箋。「やり直し」。
デスクの端には、同じ付箋が貼られた企画書が、すでに3部重なっている。
ひより「……どこがダメですか」
桐谷「自分で考えろ」
ひより「せめて、方向性だけでも」
桐谷は答えず、重なった企画書のいちばん下、1回目のものを抜き取る。
桐谷「これ、もらう」
ひより「それ、最初にボツになったやつですけど」
桐谷「だから、もらう」
桐谷、自分の席に戻る。
桐谷「今日中な」
ひより(M)「……定時、二時間前に過ぎてるんですけど」
ひより、机の下でスマホを打つ。
【映像】社内チャットの画面。
「桐谷さん、まじで何考えてるか分からない。ボツの企画書まで回収された。嫌がらせ?」
送信。
【映像】宛先の寄り。「桐谷 蓮」。
ひより(M)「……送る相手、間違えた」
【映像】メッセージに「既読」がつく。
ひより、おそるおそる斜め向かいの席を見る。
桐谷は、PCを見たまま。表情は変わらない。
沈黙。キーボードの音だけが響く。
ひより(M)「……無視が、いちばん怖い」
桐谷、PCを閉じて立ち上がる。
桐谷「お疲れ」
それだけ言って、フロアを出ていく。
ひより、机に突っ伏す。
○ シーン2 エレベーターホール(朝)
【映像】朝の光。エレベーターを待つひより。目の下にうっすらクマ。
部長「おはよう。昨日の企画、見たよ」
ひより「え?」
部長「『今日は、がんばらなかったあなたにも。』……いい見出しだね。来月の会議に出そう」
ひより「……それ、ボツになったやつで……」
部長「桐谷くんが朝いちばんに持ってきたよ。『うちの若手が書きました』って」
ひより、言葉が出ない。
【映像】ひよりの後ろを、コーヒーを持った桐谷が通り過ぎる。
ひより「桐谷さん! なんで……」
桐谷は立ち止まらない。振り返りもしない。
桐谷「今日中な」
エレベーターの扉が閉まる。
ひより(M)「……じゃあ、なんで4回もやり直しさせたの」
スマホの通知音。
【映像】ひよりのスマホ。昨夜の誤爆メッセージの下に、桐谷からの返信が一行。
「嫌がらせじゃない」
ひより(M)「……じゃあ、何?」
【映像】画面に「入力中…」の表示。
(暗転)
テロップ:第2話「4回目のやり直しの理由」
伏線と回収
- 「だから、もらう」の意味は、翌朝に分かります。
- 「今日中な」は、夜は意地悪に聞こえて、朝は照れ隠しに聞こえます。
- 誤爆に一晩返事がなく、朝になって一行だけ返ってきます。
- 見出しが良かったのに、なぜ4回もやり直させたのか。その答えは出さずに、第2話へ引っぱります。